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【裏】大奥

其の壱

その昔、女たちの大奥の裏にひとりの男の為に集う男の大奥があった事を知る者は居ない
               何故なら、一度関わった者は一生口を閉ざし、
         そして愚かにも口を開いた者は問答無用切り捨てられたからだった

          この話は『裏・大奥』で繰り広げられた男たちの欲と恋の話である。

                       ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


illustration (c)undercooled pio

「上様今日から、こちらに参りました秀麗という者でございます」
そう紹介されても怖くて秀麗は顔を上げられないでいた。
「秀麗で御座います。宜しくお願い致します。」
額を畳に付けたまま、秀麗が挨拶すると

「顔を見せろ」と低い声が返ってきた。
恐る恐る顔を上げると、そこには想像以上に体躯が良く、そして美麗な顔の男がいた。
「女みたいな顔だな・・・まぁよい、湯殿へ行って身を清めて来い」

その男の言葉に世話係の男が「上様、まだこやつは躾が終わっておりませぬ故・・」
そう言うと「まだ食いはせぬ、味見だけだ、構わぬ」
「承知致しました」と世話係の男が頭を下げ、秀麗を促した。

「あぁ、髪は下ろして来い」そう付け足す男に世話係が又頭を下げる。
秀麗は湯殿に案内される間、その世話係に色々と注意された。
躾が終わってないと言ってはあるが、それでももし求められたら
逆らわず言う事を聞くように、と。

「躾?」何の躾だろうと秀麗は先ほどから気になっていた。
「拡張の事だ」
「?」
「ここにいる男たちは皆そうやって躾を受けて来たんだ。」

拡張と言われても秀麗には全く意味が判らなかったが
「最初は辛いじゃろうが、慣れたらここは天国だ」
そう世話係に言われたが、その意味も又判らない秀麗だった。

秀麗の親は長屋で町医者をしていた、だが生活は楽では無い。
金の無い町人の為にお代をとらずに治療するような医者だった。
お陰で子沢山の家の家計は火の車、そんな時に見初められ請われて此処へ来たのだった。
ただ、城で殿様の身の回りの世話をすると言われ。

だが、秀麗が城に上がってから一度も女の姿を見ていなかった。
城内というのは、もっと華やかな所かと思っていた秀麗は少し戸惑っていた。

そして今、訳も判らず湯を浴びて身を清めた。


「秀麗も明日から躾を始めるから、そのつもりで」そう言われてもただ「はい」と返事するだけだった。
風呂に浸かり、言われたように髪を下ろしたまま、又長い廊下を戻った。
此処に居る間は褌は付けてはならない、と言われてるので
何となく落ち着かないで、腿を摺り合わせるように歩いた。

「おや?新入りだね・・・」
突然声を掛けられ、驚いて見ると、そこには着流しのまま柱に凭れかかっている男がいた。
これもまた背がすらっとし、綺麗な青年だった。

「はい、秀麗に御座います、宜しくお願い致します」
「ふーん・・・私は紅蓮・・・」そう言うと怪しげなその男は
秀麗の顎を指で持ち上げ、観察するように眺めた。

「ふーん・・随分と女みたいに綺麗な顔をして・・・これじゃ大変だねぇ・・」と意味ありげに
妖艶な顔で独り言のように呟き、そして笑いながら去って行った。
「紅蓮様も相変わらずだ・・・」世話係が溜息混じりにそう言った。

さっきの部屋の襖の前で「秀麗を連れて参りました」と世話役の男が声を掛けた。
「入れ、佐助お前はもう下がってよいぞ」
「はい、承知致しました」
佐助は秀麗に中に入るように小声で指示した。

「ご寵愛を受けるように頑張るんだぞ」そう肩を叩き長い廊下を又歩いて行った。
ひとり残された秀麗はどうしたらいいか判らず、その場に座ったままだった。
「秀麗・・・入って来い」再び声が掛かり
「はい」そう返事をして秀麗は、その襖に手を掛けた。

この瞬間から秀麗の運命が動き出す。
怒涛の幕開けの瞬間だった。

「襖を閉めてこっちへ来い」
そう言われ秀麗は呼ばれる方へにじり寄った。
「酌を・・」そう言われ盆に乗った徳利を持って杯に注ごうとするが
手が震えてなかなか上手に注げない。

「震えてるのか、私が怖いか?」
この男が怖い訳では無かった。
が、何か得体のしれない何かが秀麗の恐怖を煽っていた。
ガチャガチャと杯に徳利がぶつかり音をたてる。

ついに秀麗の持つ徳利が倒れ、その男の手を濡らした。
畳に頭を擦り付け「申し訳御座いません」そう侘びを言うと、その男は
「舐めて綺麗にしろ」そう言ってその酒で濡れた指を目の前に差し出した。

秀麗は、恐る恐るその指を口に含んだ。
そして濡れた指や手の甲を舐めて行く。
ペロペロと猫のように、ただ懸命に舐めた。

「もう良い」
その男はそう言うと、天井からぶら下がった大きな鈴を鳴らした。
秀麗が身を竦めていると
廊下から「お呼びでしょうか?」と佐助の声がした。

「紅蓮を呼べ」
「かしこまりました」佐助が紅蓮を呼びに行ったのだろう足音が遠ざかる。
「これからやる事をよく見ておくんだな」
それだけ言うと又杯を口元に運んだ。

「紅蓮で御座います」襖の外から声が掛かった。
「入れ」
襖を開けて入って来た紅蓮が秀麗を見て少し驚いた顔をした。
だがその顔は直ぐに穏やかな顔に戻り、秀麗を見て小さく頷いた。

「上様、久しぶりにお声が掛かり嬉しゅう御座います」
そう言って徳利を持って器用に杯に酒を注いだ。
「お前はお前で楽しんでいるのだろう?」揶揄するように言う男に
紅蓮はまたあの妖艶な笑みを返した。

「来い」その男が紅蓮の腕を引き、胸に抱えた。
「あっ・・・上様・・・この子は?」
「見物させておく」
そして秀麗に向かって「良く見ておくんだぞ」と声を掛けた。

秀麗はこれから何が始まって、何を良く見ておけば良いのかも判らず頷いた。

紅蓮がその男の着物の前を開き、そしてそこに顔を埋めた。
そこには何があるのかは、同じ男の秀麗にも理解は出来た。
「私の隣に来い」そう言われ秀麗は呆けたようににじり寄った。
そしてその位置は紅蓮が何をしているのかが、良く見える場所だった。

紅蓮が口いっぱいに頬張っているのは、その男の一物だった。
「!」悲鳴が零れそうな口を自分の両手で塞いだ。
「ん・・ん・・んぐぐ・・」苦しそうな呻き声が頬張る隙間から漏れる。

紅蓮は秀麗に良く見えるように、支えている手を離して口だけで奉仕して見せた。
孤立したそれは、支えずともしっかりと天を向いている。
秀麗の体が小刻みに震えるまで、そうやって見せ付けた。

「用意は出来てるのか?」その男が声を掛ける。
「はい・・・充分に」紅蓮の返事に頷いた男が
「手を突け」と言うと
言われるがまま、紅蓮は畳に手を突いて四つん這いになった。

男が紅蓮の着物を裾を腰まで捲し上げ、
そしてさっきまで、紅蓮の口に咥えられ天を向いた恐ろしい程の大きさの物を
紅蓮の後孔に押し当てた。
「ああぁ・・・上様・・・」紅蓮の声が聞いた事の無いような艶かしい声に変わった。

「挿れるぞ」そう声を掛け、男は己の昂りをゆっくりと押し進めた。
「ああああぁぁぁ・・・上様ぁ・・・」
紅蓮が矯正を上げた時、今まで息を殺し見ていた秀麗の体がふわっと前のめりに倒れた。

秀麗はあの男の肉棒が紅蓮の体に沈み込むのを見た途端目の前が真っ暗になって倒れた。
そんな秀麗を見て「まったく・・・こんな様子でこれを受け入れられるのでしょうかね?」
と呟いた。その呟きを受けた男の肉棒がぐんと膨れ上がったのを紅蓮は体で感じた。

「ああぁぁぁ・・・上様・・・凄いっ・・あぁ・・・もっとぉ・・」
快感に慣れた紅蓮の体は貪欲に男を求める。
「くっ・・・秀麗を起こせ」
「あぁ・・はぁ・・」
紅蓮は荒い息を吐きながら、秀麗の体を畳の目に滑らせ手繰り寄せた。

「どうやって起こしても?」紅蓮の目が怪しく光った。
「好きにしろ」と腰をぐいっと打ち付けた。
「ああ・・っ!上様ちょっと・・・あん・・・」
後ろから突き上げられながらも、紅蓮は秀麗の前を開いた。

まだ眠る幼い肉棒を手でゆるゆると扱いてから口に咥えた。
暫くすると刺激からか「んん・・・」と小さく声を出して秀麗が目を開ける。

「えっ?いやーーっ!お止めください紅蓮様ぁ」
目が覚めると、さっきまで、この男にしていた事を自分がされているのだった。
秀麗の驚きといったらない。
「やあーっ!紅蓮様お願いでございます」

紅蓮が後ろから突かれる度に咥える角度や深さが変わって秀麗は悶えながらも訴えた。
「あぁ・・お願いでございます・・・・」
だが、紅蓮の舌技を経験の無い秀麗の体が耐えられるはずもなかった。

だんだんと勃起してくる自分の体にとうとう涙を流しながら
「あぁ・・・紅蓮様・・・秀麗はもう・・・もう・・」
そう泣きながら、両手で顔を覆った。

「秀麗、顔を見せろ」紅蓮の背後で腰を抱えた男が低く呟いた。
その命令に背くことなど出来ない秀麗が恐る恐る手をどけた。
秀麗は自分の肉棒を口腔深く咥えられ、我慢の限界に来ていた。

「ああぁぁ・・紅蓮様、変です・・変です・・・あぁぁ・・・熱いんです」
その声を受けて男が紅蓮の一番深い所を突いた。
だが紅蓮はその衝撃に耐え、秀麗を達かすべく激しく吸い上げた。
「いやぁーーーっ!」初めての経験に秀麗は涙をボロボロ零しながら
その快感の全てを吐き出した。

白い頬がピンクに染まり、口を半ば開いたその顔は紅蓮が見ても感じ入るものがあった。
後孔を貫いた肉棒がぐんと嵩を増し、そして紅蓮の体内に熱い物を放出させた。
それと同時に紅蓮も体を痙攣させ、白濁を飛ばした。

その男が達ったのも、紅蓮が達ったのも
普段に比べたらかなり早い時間での事だった。
ふたりとも、秀麗の達き顔に持っていかれたといっても過言では無いだろう。

紅蓮は事が終わりその男の肉棒を綺麗にしていた。
だが秀麗だけは呆けたように、ただ座っていただけである。
紅蓮はそんな秀麗の体も綺麗に拭いてくれた。
「秀麗・・あんたもそのうち経験する事なんだから、ちゃんと覚えるんだよ」
そう言われて、華奢な肩をビクンと震わせた。

『私も経験する?・・・・・』
「・・・紅蓮様・・・そんなの無理です・・私の体にはあんな大きな物を入れる穴は付いておりません・・」
真剣な顔で訴える秀麗を、呆れたような、そして愛しむような顔で
「大丈夫だよ、明日から躾師がちゃんと入るようにしてくれるから」

「躾・・・・・いやです・・・怖い」
今見た男と男の交わりが余ほどショックだったと見える。
「大丈夫・・・少しづつ拡げるから、痛くはないから・・・」
そう言って慰めるが、秀麗の涙が止まる事は無く
「いやです・・・いやです・・・」その言葉を繰り返していた。

「紅蓮、もう良い下がれ」
男に言われ「秀麗はどうしましょう?」と尋ねると
「いい、ここに置いておけ」そう言われ、内心紅蓮は驚いた。
情事を終えた後すら、寝所に泊めるような事をしない男が
まだ使い物にもならない秀麗を泊めるとは?

「畏まりました、では私は下がらせて頂きます」
そう言って紅蓮が頭を下げて寝所から出て行った。
一人残された秀麗は不安な顔で男を見る。
「そういう顔をするな、もう休むぞ、お前もこっちへ来い」

そう言って布団に誘われた。
秀麗は震える体を布団に横たえる。
「心配するな、疲れただろう、もう寝なさい」
その男の優しい声に少し安心した秀麗が
「はい・・・」と小さく頷いた。

秀麗はその男の布団の中で小さくなって目を閉じる。
この城に来て初めての夜を、ここの主と同じ布団で迎える事が
どんなに珍しい事なのか秀麗は知らなかった。

そして疲れた体と心は、あっという間に深い眠りに堕ちて行く。
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