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【裏】大奥

其の拾


「ぐ・紅蓮さま・・・・」
抱かかえられた秀麗が朦朧としながら紅蓮の名を呼んだ。
「秀麗!大丈夫か?」
「う・上様を・・お責めにならないで下さい・・・私が
・・・私がきちんと準備しておかなかった・・から・・・」
それだけを言うと、また疲れたように目を閉じた。

「・・・秀麗」こんな目に合ってまで何故上様を庇う?
すかさず兼光が秀麗に歩み寄った。
「秀麗・・・すまなかった、明日は秀麗の好きな水菓子を用意させよう」
そういう労わり方しか知らない兼光だった。

「紅蓮・・・準備はいらぬ」
それだけを言うと早く秀麗を連れて行けと言う素振りをした。
「失礼致します」
紅蓮は一礼して、秀麗を抱かかえたまま部屋を辞した。


温めの湯に秀麗の体を沈める。
そっと後孔に指を入れると
「つっ!」無意識に秀麗が唸った。
「秀麗・・・少しだけ我慢してくれ」
紅蓮とて、この状態で事後の処置をされる事がどんなに辛いか想像は出来るが
中に溜めておくわけにも行かなかった。

「ぐ・紅蓮様・・・申し訳御座いません・・・」
紅蓮に世話をかけまいとして、結果的には更なる世話を掛けてしまった事を詫びた。
「秀麗・・何故私に頼らない・・・」
それが紅蓮には納得行かない事のひとつだった。

「こ・小雪様に悪う御座います・・・」
やはりそうか・・・あの夜の情事を秀麗は勘違いしている。
「小雪とは・・・・・」体だけの付き合いだと言おうとして、紅蓮は躊躇った。
自分が汚い男だと、秀麗に言いたくなかった。

「それとは別だ・・・私はここでは一番の古参だ、
新入りの面倒を見るのは当たり前だ・・・」
「・・・・・そうですか・・」
そういう気持ちで紅蓮が秀麗に接していたのだ・・・秀麗の心にまた一つ傷を作った。

紅蓮とて、この掻き出す指を愛撫の動きに変えたいのを必死で我慢した。
だが、秀麗の体を見て、その体に少しだけ芯が通っていたのに気づいた。
「秀麗?秀麗は気をやらなかったのか?」
その意味があまり良く判らない秀麗が「えっ?」と言うと
「秀麗はここから白い液を出したのか?」と秀麗の性器をちょこんと指で触った。

「あ・・・・いえ・・」最初は気持ち良いと感じ、今にも射精しそうだったが
兼光の性急な動きでそんな状態では無くなったからだ。

「・・そうか・・出さないと辛いな・・」
一度吐き出す寸前まで溜められた物は秀麗の中で燻っている事だろう。
「だ・大丈夫で御座います・・・・そんな」
秀麗にも出すという意味が判って来たから、焦ってそう答えた。

「大丈夫だ、痛くなどしないし、私に任せなさい」
「紅蓮様・・・嫌で御座います」
湯の熱気のせいなのか、頬を染めて恥らう秀麗を見ると
兼光の暴挙も判らない訳ではないが・・・・

紅蓮は後孔に入れた指で秀麗の少し盛り上がった箇所を探した。
中も全体的に傷付いているし、熱っぽい。
痛がるようなら直ぐに止めよう、そう思ってその盛り上がりをそっとそっと撫でた。
「あ・・・っ」
秀麗の声の甘さを確認した紅蓮は、もう一度その部分を、今度は少し強く撫でる。
「あぁ・・っ・ぐ・紅蓮さま・・・・」

その刺激で秀麗の前がだんだんと育って来た。
「ここは気持ち良いだろう?」秀麗の耳元で甘く囁いた。
「は・はい・・・・気持ち良う御座います」消え入りそうな声が聞こえる。

紅蓮は空いた手で、秀麗の竿を扱きながら、小さな袋にも愛撫を加える。
「あぁ・・・」秀麗の体はあっという間に最大限に膨らんできた。
紅蓮の指先が秀麗の鈴口を撫で回し、そしてそこにグイっと指の先を立てた。
「いやぁぁぁぁ・・・紅蓮様ぁ・・・・あぁぁ・・・・・」
「秀麗・・・気持ち良いか?」
反応を見れば判るものの、秀麗の口から何度でも聞きたい
「あぁぁ・・・ぁ・・気持ち良いで御座います・・あぁ」

紅蓮は動かす手を早くし、そして中の盛り上がった所も少し強く押した。
「あーーーーーっ・・・もっ・・もっあぁぁぁ・・・紅蓮さまぁ・・・
・・・・・秀麗は出してしまいそうで御座います・・・・もっ・・・・ああーーーっ」
ビクンビクンと体を痙攣させ、そして白濁を飛ばしながら、秀麗が気をやった。

「はぁ・・はぁ・・・・・」
最初に兼光に貫かれながら、秀麗を口で達かせてやった
あの時の秀麗の顔を見て、自分も上様もいつもよりも早い吐精をした。
その時よりも、男を受け入れる事を知ったせいか?
数倍も、その顔は艶かしく、そして美しかった。

湯から秀麗を抱かかえ出ると、外には紅蓮付きの小姓が二人待機していた。
秀麗の体を拭き、浴衣を着せる。
秀麗の部屋の布団にそっと寝かせ、軟膏も塗ってやったが
その間秀麗が目を覚ます事はなかった。

紅蓮が自分の部屋に戻る途中、佐助が待っていたように声を掛けてきた。
「紅蓮様・・・上様をそうお怒りになりませんよう・・」
この男は今夜の出来事を何処まで知っているやら?

紅蓮が返事をしないでいると、佐助は話を続けた。
「秀麗様は上様にとって特別なので御座います。」
「どういう意味だ?」
「秀麗様の前では初めてお会いしたように接しておられますが
1年程前、お忍びで城下に行かれた際に、秀麗様をお見かけして
上様が一目で気に入られ、秀麗様が16になるのを待ってのお召抱えで御座います」

「あの上様が1年も待ったと言うのか?」
「左様で御座います・・あの上様が初めて本気で欲しいと思われたのです」
だから兼光の暴挙に目を瞑れというのだろうか?

「秀麗様の父殿にも半値で薬を手に入れられるように手配されてます。
勿論その半分はこちらで支払っているのですがね・・・・」

紅蓮はまさかそこまで兼光が気を配っているとは知らなかった。
紅蓮は秀麗の年季が明ける1年後に一緒に此処を去るつもりでいた。
だがもしかして・・秀麗は此処を出る事は出来ないかもしれない・・・
一抹の不安が胸をかすめた。

秀麗は夢を見てた。
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「お坊様、お坊様」
「私を呼ばれましたか?」
「はい・・・暑い中の修行ご苦労様で御座います」
「暑いですか?」そう言って笑顔を向ける坊様の額には汗など滲んでいなかった。
「あっ・・」秀麗は涼しげな坊様の顔に見惚れてしまうほどだった。

「私は今この朝顔の鉢植えしか持っておりません・・・
坊様は・・・道中邪魔になってしまいますね」
そう笑顔で問いかける秀麗に向かって
「あなた様はとても澄んだ綺麗な目をなさってますね。
あなた様のその笑顔を思い浮かべると1里でも2里でも元気で歩けそうですよ、ありがとう御座います」


そんな会話を交わして坊様と別れると、ひとりの侍が近づいて来た。
「その朝顔を譲ってはくれまいか?」
供の者をひとり従えた体躯の良い侍だった。

「この鉢をですか?」
秀麗が驚いて尋ねると、懐から金子を出して秀麗に渡した。
それは秀麗など普段見る事もない1両小判だった。
「お・お侍様!このような金子は無用で御座います。
この朝顔がお気に召したのでしたら、差し上げますので、どうぞお持ち下さいませ」

「しかし・・・」そう言って躊躇うその侍に朝顔の鉢を押し付けるように
「では、私はこれで・・・ちゃんとお水をあげて下さいませ」
そう言ってその侍の元を秀麗は小走りで去った。




秀麗は朝の光の中目を覚ました。
「夢・・・・あっ!」
秀麗の目に飛び込んで来たのは、鉢植えの朝顔だった。
それも5鉢も並んでいる。
自分があんな夢を見たのは、この朝顔の匂いのせいなのだろうか?

だけど幸せな夢だった・・・
あの頃はまさか自分がこんな事をするようになるとは考えもしなかった。

体が重い・・・
身を起こそうとすると、腰と・・・昨夜兼光を受け入れた後孔に痛みが走った。
また秀麗はそのまま横になった。
昨夜の事を考えると、身が凍るようだったが、
やはり自分が悪い・・・そう思った。

あの後、紅蓮に抱かれて湯に浸かったのは覚えている。
その時・・・・・それもうっすらと記憶にあった。


「入るぞ」秀麗の返事も聞かずに襖が開いた。
「う・・上様・・・」まさか兼光が直接部屋に来るとは思ってもいなかった
秀麗が慌てて身を起こそうとするると
「いや、そのままでいい」と兼光に制された。

「秀麗・・・体はどうだ?辛いか?」
「上様・・申し訳御座いませんでした」
秀麗は昨夜きちんと兼光を満足させてやれなかった事を詫びた。

「私も・・・どう償えばよいか?」
「そ・・そんな上様・・私が悪いので御座います」
兼光からは昨夜の暴君振りは全く感じられなかった
ただ秀麗にすまないという気持ちだけが伝わって来た。

「あ・あの・・・この朝顔は上様が?」
「どうだ?気に入ったか?朝顔みたいに朝には元気になって欲しいと思って・・」
「はい、ありがとうございます。私は朝顔が大好きで御座います」
「そうか・・・良かった」
優しい兼光の声に秀麗が

「上様・・私夢を見ておりました・・・昨年の夏の夢なのですが
その時に私も朝顔の鉢を抱えておりました・・・・幸せな夢でした」
秀麗は兼光に夢の話をしながら、もうあの頃の自分には戻れないのだ・・
そう思うと、切なくて寂しくて涙が出てきた。

「しゅ・秀麗どこか痛むのか?」
そんな秀麗に兼光が慌てて、顔を覗き込んだ。
「いえ上様・・・ちょっと懐かしかっただけで御座います」

『そういえば、あの時のお侍様は枯らさずに育てて下さっただろうか?』
秀麗がふとそう思いながら、並べてある鉢植えに視線を投げた。

「あっ!」
「どうした秀麗?」
「う・上様・・・あの一番左の鉢を見せてはもらえませんでしょうか?」
兼光が立ち上がり、言われた鉢を手にして「これか?」と聞く。
「はい・・・・」

起き上がれない秀麗の枕元にその鉢を持って来た。
「あ・・・・・この鉢は秀麗の鉢で御座います!」
どうしてこの鉢が此処にあるのか、秀麗は全く判らなかった。
「どうしてこれが秀麗のだと、判るのか?」

兼光の問いかけに「ほらっ、ここ・・ここに『秀麗』と小さく・・私の書いた字です・・・あっ?」
子供のように、自分の書いた字を指して喜ぶ秀麗の顔がキョトンとした顔になった。
「も・・もしかして・・あの時のお侍様は上様?」
布団の中から、潤んだ瞳で秀麗が兼光の目を真っ直ぐ見つめた。

「ああ・・・そういう事もあったな・・」兼光は言葉を濁すが
「でも・・・朝顔は一年草・・」
「種を採った」ちょっと照れた顔の兼光に秀麗は微笑みながら
「上様・・・お優しいのですね、それにすごい偶然もあるものですね・・・」

偶然では無い、と言いたかった兼光だが、自分の事を思い出してくれただけでも
それだけでも嬉しかった。

「秀麗、何か必要な物はないか?何でも用意させるが?」
「いえ・・・それより上様・・・秀麗は今夜・・・」
秀麗は今夜もまた同じ事を繰り返されてしまうのだろうか?と不安だった。
まだ立つ事も出来ないのに、上様のあの物をもう一度受け入れないとならないのだろうか?と。

「秀麗・・・今夜も私の部屋へ・・」
「・・はい」返事をして目を閉じるとその目尻から涙が一筋零れてしまった。
「何か美味い物でも用意させよう、それに書物も・・・」
「う・上様?」
「秀麗、そなたの体が治るまで抱きはせぬ・・だが一緒に夜を過ごしてはくれまいか?」

「上様・・・ありがとう御座います。夜には上様のお部屋に上がれるように養生致します」
秀麗は兼光の優しさに触れて嬉しかった。
体を開かなくてもいい・・・
まだ痛みの残る体は、同じ事を繰り返したら・・・自分は耐えられないだろうと思っていた。

「ではあとで、食事と薬を用意させる故、薬は紅蓮に任せる」
「は・はい・・・」
紅蓮の名を聞いて、何故か秀麗はきゅっと胸が痛んだ。
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