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【裏】大奥

其の拾伍


「秀麗様〜」小姓たちに呼ばれては、あっち行きこっち行きしている秀麗を
紅蓮が口元を緩め見ていた。
昨日の暗い顔が嘘のように、元気になっている。

『これ以上何も起こらなければ良いが・・・』
「紅蓮様!」
秀麗が茶屋の店先で紅蓮を手招きしている。

ちょっと遊び人風に着流しにしている紅蓮に比べ
秀麗は袴姿だった、その格好は一緒にいる小姓達に紛れて
判らない程に若々しかった。
考えてみればまだ16の少年だ・・・

「どうした?饅頭か?」
紅蓮の言葉に小姓たちがもじもじしている。
そんな小姓たちを見て秀麗は「はい!」と元気良く答えた。
秀麗に釣られるように、他の小姓も「はい」と嬉しそうに答えた。

奥では、欲しいと言えば秀麗なら何でも食する事は出来るだろうに・・
何よりも茶屋で皆で食べる事が嬉しそうだった。
「紅蓮様・・・ありがとうございます」
ぽそっと秀麗が小姓たちに聞こえないように礼を述べた。

明るい太陽の下なのに、紅蓮は今の秀麗を抱きしめたくなっていた。
そんな気持を抑えるように「楽しいか?」と聞くと
「はい」又幸せそうな顔の秀麗を見れた。
「それは良かった」ただそれだけしか答えられない自分に紅蓮は笑った。

その後、秀麗は硯と小筆を買い、小姓たちの分も
「暇な時に、一緒に勉強しましょう」そう言って自分と同じ筆と硯を買い与えた。
「秀麗様、有難う御座います」小姓たちは涙を浮かべる程感激していた。

そして皆で蕎麦を食べて城に向かう頃にはだんだんと秀麗の顔が暗くなってくる。
「薬草の書物はまた上様にお願いすればいい・・」
探していた書物は何も見つからなかった秀麗を慰めるが
「はい・・・」秀麗は浮かないままだった。

「大丈夫だ・・」紅蓮は秀麗の手をぎゅっと握った。
「紅蓮様・・・」不安を感じる秀麗にはその紅蓮の言葉が嬉しくて、その手をそっと握り返した。


その頃表では、兼光に秀麗への仕打ちが耳打ちされていた。
「誰がそんな事を!」兼光の声が怒気を含んでいた。
「まだ判りません、今調べております」
「新しい書物を早急に取り寄せろ」
「もう手配はしてあります」忍びの芳(よし)の言葉に兼光は満足そうに頷く。

「秀麗は今何をしている?」
「紅蓮様と一緒に城下へ・・・もう戻られる時刻かと思われます」
「紅蓮と城下へ?」
兼光は今秀麗の傍に居てやれない自分が悔しかった。

「上様」外から滝澤の声が聞こえた。
その瞬間に芳の体が天井に吸い込まれるように消えた。
「滝澤か・・丁度良かった入れ」
「失礼致しますよ」そう言う滝澤の声は機嫌よい声ではなかった。

兼光も滝澤の不機嫌の理由ははなっから判っている。
昨日も夜伽はなし、そして今日もその気にはならない。
「滝澤、今夜だけあちらに戻っては駄目か?」
とんでもないという顔で滝澤が兼光を見る。
かつて表に居る間にそんな事を言われた事などなかった。

「何か問題でもおありですか?」
「うむ・・・」兼光はここで裏のごたごたを滝澤に話す事は得策では無い事は承知していた。
「条件が御座います」滝澤の言葉に兼光が驚いた。
「その条件とは?」兼光は滝澤の言いたい事は予想はついていたが、あえて聞いてみた。

「あと3回は夜伽を・・」
「・・・判った」あまり飲みたくない条件だったが、とにかく秀麗に逢いたくて堪らなかった。
「上様、みなが寝静まってからのお出かけを・・」
一刻も早く行きたいが滝澤に釘を打たれて渋い顔をする兼光を滝澤は見つめた。

滝澤は15で城に上がり、それ以降ずっと兼光の世話をしてきた。
こんな兼光を見るのは初めてのような気がする。
「上様も余程その秀麗という子がお気に入りなようで・・」
「佐助か・・・」滝澤が秀麗の名前を知っているという事は佐助から逐一報告が来てるのか?

姉のように母のように接してきた滝澤にとっても、兼光の性癖には頭を抱える所はあるが
それでも、やはり兼光が可愛い。
その兼光が初めて本気で惚れた秀麗という子を見てみたい・・
滝澤は結局自分は兼光に甘いと・・内心苦笑していた。


そしてその夜遅く兼光は芳の手引きで、秀麗の部屋に忍び込んだ。
眠っている秀麗の布団をそっと捲り、半身を布団に入れた。
人の気配で秀麗が身じろぎをして、そしてその目が少し開いた。
「えっ?う・上様?」
秀麗の反応は兼光を喜ばせるものだった。
「秀麗・・・よく私だと?」

「はい・・・香で御座います」
「伽羅か・・・・」
「でも・・どうして上様がこちらに?」
考えてみれば今はこちらには兼光は居ない日だった筈。

「夜這いに来た・・」兼光が秀麗の耳元で低く囁いた。
「よ・夜這いって・・・・」夜這いの意味が判らない程秀麗も子供では無い。
「駄目か?」そう言いながら兼光は秀麗の耳朶を軽く噛んだ。
「ぁ・・・駄目で御座います・・・小姓たちが・・・」
手前の部屋で眠っている筈の小姓の存在が気になる。

「大丈夫だ・・・もう誰もおらぬ」
その辺は抜かりなく、小姓たちは違う部屋に連れて行ってある。
「これで大丈夫だろう?」項に顔を埋めながら又兼光が囁いた。

「だ・駄目で御座います・・・・あ・油が・・・」
受け入れる事を暗に示唆してるようで、秀麗が羞恥で顔を染めている。
「大丈夫だ・・ちゃんと用意して来た」
秀麗の寝巻きの肩を肌蹴、その肩に唇を寄せながら兼光は答えた。

そしてその指が秀麗の胸の尖りを摘むと
「あぁ・・・・うえさま・・・そこは駄目・・・」
兼光が帯を解かないままの秀麗の胸元を左右に開いた。


その頃、秀麗付きの小姓たちが紅蓮の部屋に連れて行かれていた。
人の気配で起きた紅蓮が「何?」と身を起こそうとすると
耳元で忍びの声がした「大丈夫で御座います、小姓たちを此処で・・」
「秀麗に何か?」紅蓮が不安になって聞くと
「上様の夜這いで御座います・・・」

「夜這い?・・・まさか・・・」
表からの夜這いとは?紅蓮は兼光の秀麗への執着というか
盲目さに言葉が出なかった。
それは安堵というよりも、新たな不安を紅蓮に呼び起こさせた。

兼光が帯を解かないままの秀麗の胸元を左右に開いた。
そしてその白い薄い胸に輝く2つの尖りに同時に指を這わせた。
「あ・・・・っ」
両の尖りを指で挟まれくりくりと捏ねられる感覚に秀麗が身悶えした。
それだけでも兼光は嬉しくて堪らない。

「秀麗の体はどんどん敏感になって来るな・・」
そんな言葉にも恥らって身を捩る秀麗を見ただけで
兼光の腰が疼いてしまった。

秀麗の尖りが色濃くぷっくらとして来るまで兼光の指は止まらない。
「はぁ・・・・っ・・・うえさま・・・」
「ほら秀麗・・ここが私に噛んで欲しいと大きくなって来たぞ」
「やぁっ・・・」首を振り否定するが、その尖りがジンジンとしている。

そのぷっくりとしてきた尖りを兼光が優しく噛んだ。
「やぁーっ・・・あぁっ・・・だめ・・・・噛んではだめ・・・」
秀麗は噛まれた尖りがずくずくと妙な快感を生んでくるのが怖かった。
「あぁん・・・はぁ・・・っ」
舌先で転がされる頃には秀麗の喘ぎも艶を増し、目も潤んできた。

「秀麗今夜はもっと気持良くしてやるからな」
そう言うと兼光は秀麗の細い腰紐を解き、その紐を勃ち上がった
秀麗の物に巻きつけ結んだ。
それがどういう事なのか秀麗はまだ知らなかった。

だが、兼光の油を付けた指が秀麗の後ろを弄り解し始めた頃
秀麗はその結ばれた紐も意味を知った。
「あぁ・・うえさま・・・これを解いて下さいませ・・・」
「まだ駄目だ・・・」
「あぁぁ・・」
兼光の指が秀麗の蕾を押し分け、中に入って来た。

油の付いた滑る指で中を擦られると気持ち良かった。
兼光の指の動きに合わせるように、秀麗の腰も僅かに揺れてしまう。
その指が何度も秀麗の中を行き来する。
「あぁぁぁぁ・・・上様ぁ・・・お願いで御座います・・・」
吐き出せないもどかしさに秀麗は涙声で訴えるが、兼光は解こうとしなかった。

その上、立ち上がった秀麗の鈴口にまで舌を這わせた。
「あああぁぁぁぁ・・・もっ・・・あぁぁ・・・」
敏感な部分に舌先を窄めて、今にもその中に入って来そうな勢いだった。
「やっ・・やっ・・ああっ・・・」

その感覚に気を取られている間に兼光の指が2本に増やされた。
「う・・・」小さく呻く秀麗に向かい
「秀麗の此処はすぐに狭くなるな・・・だが、私の物を受け入れられるまで
拡げて行くのも楽しいがな・・・」
兼光は今まで、こんな事などした事が無い事すら忘れてしまう位に
秀麗の体にのめり込んで行った。

時間を掛け、大量の油を使いやっと兼光の一物を受け入れ
秀麗は、ひと突きされただけで吐精の無い絶頂を迎えてしまった。
その後はなし崩しに受け入れ、貪欲に快感を貪ってしまった。
そんな秀麗を愛しく思い後ろ髪を引かれる思いで兼光が部屋を出たのは
もう外が白々と明ける頃だった。



秀麗が目を覚ますと、心配そうな紅蓮の顔があった。
「紅蓮様・・・」
紅蓮の顔を見ると、秀麗は大粒の涙をぼろぼろ零しながら嗚咽した。
「秀麗!何処か痛むのか?」紅蓮が心配して声を掛けると

「紅蓮様・・・秀麗は・・秀麗の体は変になってしまいました・・
このまま行くと頭までおかしくなってしまいます・・・・」
そう訴えるように言葉にして、又秀麗は涙を零した。
「秀麗・・・夕べ上様がお出でになったのか?」

「・・・はい・・・紅蓮様・・秀麗の体はどうなってしまったのでしょう?」
秀麗が怯えてる理由がいまひとつ理解出来ない紅蓮が
「どういうふうに変なのだ?」と聞いてみた。
「う・上様が・・ひもで・・・私の・・・」
どうしてもそれ以上は話せない秀麗に変わって
「紐で縛られたのか?此処を?」
紅蓮の視線の先を確認して秀麗が頷いた。

まだ男を受け入れる事を覚えたばかりの秀麗に
後ろだけで達する事を教え込んだ兼光に怒りを覚えた。
「秀麗・・それは男なら仕方ない事だ・・秀麗ばかりが変になる訳では無い」
身に覚えのある紅蓮の言葉だった。

「本当ですか?私の体だけが変なのでは無いのですか?紅蓮様も?」
安心した秀麗の言葉に紅蓮は仕方なく頷いた。
そんな紅蓮の膝の上に秀麗が頭を乗せて来た。
「紅蓮様・・・年季が明けたら本当に私と一緒に?」
「ああ私はそのつもりだが?」
「嬉しいです・・・あと・・まだずっと先ですね・・・・」秀麗が小さな声で呟いた。

そんな秀麗の髪を撫でながら
「1年なんてあっという間だ・・それまで頑張れ」そう言うと
膝に頭を乗せたまま「はい」と力無く頷いた。

絶対的信頼で慕って来る秀麗の気持ちが知りたかった。
兄として慕っているのか、それとも違う意味なのか・・・
「秀麗・・・年季が明けたらそなたを抱いてもいいか?」
秀麗の肩が紅蓮の膝の上でびくんと揺れた。
やはり急ぎ過ぎたか?瞬間に紅蓮は聞いた事を後悔したが
「・・はい・・秀麗も紅蓮様に・・・蓮三郎様に抱かれとう御座います」
秀麗の耳朶が真っ赤になっているのを紅蓮は見た。

「約束だぞ・・」紅蓮が照れたように言う
「はい・・約束」秀麗がそっと小指を差し出した。
その小指に微笑みながら紅蓮が自分の小指を絡めた。
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