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【裏】大奥

其の拾九


紅蓮はそんな秀麗を見ながら、自分の力の無さ、立場の弱さに唇を噛んでいた。


何度受け入れても最初が辛い・・・
秀麗は生理的な涙を零しながら、兼光の全てを受け入れる。
兼光も秀麗に埋めた肉棒を動かさないように、じっと馴染むのを待っていた。

そしてその目を紅蓮に向ける。
秀麗のそんな姿を見たくないかのように、じっと目を閉じている紅蓮に向かい
「紅蓮・・・秀麗は諦めろ」
兼光のその言葉に紅蓮が目を見開き、そして秀麗はぎゅっと目を閉じた。

「上様・・・それはどういう意味で御座いますか?」
「私は・・・私は秀麗を手放すつもりは今後一切無いという事だ」
「・・・年季が開けても・・という事ですか?」
「そうだ」
即答する兼光に紅蓮は食い下がった。

「話が違うのでは御座いませんか?秀麗は1年の約束で此処に上がっているのでは?」
「そうだ・・・だが・・・秀麗さえ『うん』と言えば秀麗の面倒は一生みるつもりだ」
そう言うと兼光はゆっくりと腰を動かし始めた。

「あ・・ぁ」
「秀麗・・秀麗はどうだ?私と一生を共にしてはくれまいか?」
「う・上様?・・・・・」
まさか兼光にこの状態でそんな事を言われるとは思いもしなかった。

まるで焦らすように、ゆっくりと抜き差しされる肉棒が今の秀麗にはもどかしくて仕方ない。
「あぁぁっ」
秀麗の中の良い部分を掠めて通り過ぎる。
「わ・私は・・・薬師になりとう御座います・・・だから・・・」
だから此処に留まる訳にはいかない、そう言いたい秀麗だったが

「それならば、手配しよう」
「上様・・違うん・・・・あぁ・・・・」
紅蓮と一緒に薬草の研究をして、一緒に貧しい人の為に尽くしたい。
兼光の傘下ではまた貧しい人々に薬など行き渡らない。


「上様は何も判っていらっしゃらない!」
紅蓮が強い口調で言った。
「好きな者に良薬も飲ませてやれず、手も尽くせずに逝かせてしまう・・
その後に残された者の気持ちをお判りですか?
貧しい者たちの死に逝く時の無念がお判りで御座いますか?」

「・・・紅蓮・・私は今の今まで・・そこまで思う者にすら出逢えなかった」
兼光の孤独が垣間見える言葉だった。

「私も秀麗も買われて・・・でも心までは・・お売りするつもりは御座いません。」
そう言うと紅蓮はそっと秀麗の元に近寄り
さっき縛った紐を解き、その肉に手を添えた。

秀麗は驚き紅蓮の顔を見つめた。
「秀麗・・・好きに達すればいい・・・上様お咎めは私に」
そう言うとその手をゆっくり上下に動かし始めた。

「あぁ・・・っ紅蓮様っ・・・・」
後孔に兼光の肉棒を埋め、そして前を紅蓮に扱かれている。
そんな紅蓮を制する事無く兼光は深く抽送を始めた。
「あぁぁぁ・・上さま・・・紅蓮さま・・・秀麗は辛う御座います」

秀麗は兼光の孤独が判る気がした。
兼光の胸の中で眠る時、自分も何故か安心するが、
『人の肌とは温かいものだな・・・・』
そう言って秀麗を抱きしめて眠る兼光の幸せそうな顔が忘れられない。

だが自分は紅蓮と此処を出る・・そう決めたのだ。



「あうっ!あぁ・・・・っ」
激しくなる兼光の抽送に秀麗の体が揺れる。
「はぁっ・・・あ・・・もう・・・紅蓮様・・お手を・・」
「秀麗遠慮せずに・・・全部私が受け止めるから」

紅蓮の言葉は精の放出だけの意味ではないように思えた。

兼光が秀麗の中の感じやすい箇所を集中的に攻めだした。
「あぁぁーっ!上様・・・そこは・・・」
秀麗の体がガクガクと震えているのが判った。
もう放出したくて堪らない。
兼光の太い肉棒がそんな秀麗の中を掻き回すように動いている。

「あぁっ!上様っ・・・・」
その時紅蓮の指先が秀麗の尿道を刺激した。
「あああーーーっ!紅蓮さまぁー駄目」
秀麗は後ろと前の強い刺激により、頭の中が真っ白になり
今まで感じた事のないような激しい絶頂を迎えた。

体中の血管が収縮し、全身が痺れるような感覚に陥った。
ドックンドックンと脈打ちながら白濁を吐き出した。
何も考えられない気だるさに秀麗の身が崩れた。

そんな秀麗を繋がったまま兼光が膝に抱え上げ後ろから抱きしめた。
殆ど意識を飛ばしている秀麗が「うっ・・」と小さく呻いた。

「紅蓮・・・私は間違っているのか?私は何も求めてはいけないのか?」

紅蓮とて3年の付き合いだ、兼光の気持ちも判らなくはない。
紅蓮から見ても兼光は秀麗を大事にしてくれるだろうと思う。
だけど此処に居ても秀麗が本当の意味で幸せになれるとは思えなかった。

「上様・・・私は秀麗の年季が明けたら、一緒に此処を出ようと思っております。
でも最後に決めるのは秀麗自身ですから・・・・」
だから兼光にも秀麗に決めさせるべきだと言いたかった。

「そなた達には本当の羽があって良いな・・・」
しみじみと羨ましそうに言う兼光の背中には
大きくて立派な羽がついている・・・だがその羽は飛べない羽だった。

「もう下がって良いぞ、紅蓮」
兼光は秀麗と繋がったまま紅蓮に下がるように言った。

そしてその日から7日間兼光は秀麗を手元から離さなかった。
だが、7日過ぎても秀麗が自由になる事は無かった。

裏に居ていい7日の間に兼光は上臈御年寄の滝澤と取引をした。

「上様・・それ程までに、その秀麗と言う子にご執心で御座いますのか?」
滝澤は信じられない気持ちだった。
幼い頃から、姉のように時には母のように尽くしてきた。
何でも手に入る兼光が物にも人にも執着する事は今まで無かった。

それが・・・秀麗さえ居れば裏を取り潰しても良いとまで言ってきた。
大奥には8人の中臈が控えている。
この中から夜伽をする者を選び、そして運がよければ子を生す。

そして裏大奥にはそれより一人少ない7人の男達が詰めていた。
元服を過ぎた頃から男色の嗜好に走った兼光は女体にはあまり興味が無かった。
子を生す為だけの繋がりは、多分兼光には苦痛だったと思う。

それは滝澤もよく判っている、だから裏大奥を一緒に作り守って来たのだ。
それも全部兼光の為、兼光の為だけに滝澤は生きて来たと言っても過言では無かった。
滝澤はこの気持ちは殆どが母性であると思っている。
そしてこれからも自分は死ぬまで兼光の為にだけ生きて行くだろうと思っていた。

そんな兼光が常に7人いた男達を解放し秀麗だけで良いと言うのだ
驚かないはずが無かった。
「それならば1年後と言わずに今直ぐにお取り潰しされれば宜しいのに・・」
「いや・・・1年だ・・秀麗が年季が明ける時に秀麗の本当の心を知りたい」

その言葉はさらに滝澤を驚かせた。
兼光の力をすれば拘束など全くもって問題ない筈だ。
それが心まで欲しいとな?

「上様、恋をなさっておられますね」揶揄するような滝澤に兼光は
「恋?・・・・滝澤・・これが恋というものなのか?」と訪ねる。
32歳になる今まで恋も知らずに生きて来た兼光を不憫にも思う。

「判りました」
そう言って滝澤が出した条件はひと月に1度は夜伽をする。
「今までのように添い寝だけでは駄目ですよ、きちんと子種を仕込んで貰います」
そしてそれ以外の日は影武者を使うとも言った。

「やはり私は幾つになっても滝澤には適わないな・・・」
滝澤の出した条件は文句の付けようが無かった。
「当たり前で御座います、私を誰だとお思いですか?」
滝澤は親しみを込めて睨むように兼光を見る。
「天下の将軍よりも強くて、凄いお方ですよ」
「おほほほ・・」

「滝澤・・・こんな私をいつも支えてくれて・・ありがとう」
兼光の殊勝な言葉に今までの苦労が報われる気持ちだった。
「上様、この滝澤は上様のお為なら何でも出来ます事をお忘れならないで下さいよ」
「ああ」


そんなやり取りがされた事はまだ裏大奥に住む男達は何も知らされては居なかった。
だが兼光が自由になった事で、もう一人計画が狂った男が居た。
老中の黒沼だ・・・
兼光失脚を密かに企んでいたこの男の計画が狂ってしまった事を
兼光も滝澤も知らない。


7日経っても秀麗を離そうとしない兼光に
「上様・・あちらには行かれなくても宜しいのですか?」
そう秀麗が訪ねると
「秀麗が年季が明けるまで、私は秀麗の傍から離れない」
兼光の言葉に秀麗は驚いた。

1年ずっと一緒に居たら情も沸くだろう。
兼光は秀麗に自分を選んで欲しかった。
金で買われたと思って欲しくは無かったのだ。

兼光は秀麗に町人の生活や、薬草の事を聞きながら
幸せな今に心をときめかせていたのだった。
秀麗の体の負担を考えれば頻繁に繋がらなくても我慢できる。
今秀麗の傍に居るのは自分だけなのだ・・・

ただ一緒の布団で眠る夜が2晩続くと、3晩目には
秀麗の着物の裾を分けて手を忍び込ませる。
「あぁ・・・・っ」

そんな日がもう何日続いているのだろう。
兼光は秀麗しか見えて無かった。
そしてこの裏にはまだ6人の男達が居る事すらも
兼光の頭の中から抹消されているようだった。



「紅蓮様・・・・抱いて下さい」小雪が紅蓮に迫る。
「よさないか・・・」
「紅蓮様だって、ずっとしてないのでしょう?体に良くないですよ」
小雪は自分の熱を解放したくて仕方なかった。

「いつまでも秀麗を思ってても無駄です!
もう秀麗は上様に・・・・もう淫らな体になってる筈・・
でも小雪は、上様のお声が掛からなくても・・・紅蓮様の方が良いから・・
だから小雪を抱いて下さい・・・もう体がおかしくなりそうです・・」

小雪の気持ちも体の具合も判る。
抱かれ慣れた体がもうひと月以上も放置されっぱなしだ・・
自分の体も正直なところ放出を求めている。
これ以上煽られたら自信も無い。

「紅蓮様ぁ・・・体が疼くんです・・・後ろが疼くんですよ」
小雪は自分の手や張り型だけでは、この熱は取れないと言う。
「小雪も可哀想になぁ・・・・此処を出るか?」
「嫌です!出る時は紅蓮様と一緒です」

そう言って小雪は紅蓮の体に圧し掛かるように紅蓮を押し倒して行った。
小雪が紅蓮の腰の物に手を回して驚いた。
「紅蓮様・・・」
紅蓮は此処では禁止されている褌を身に着けていたからだ。

「紅蓮様だけが操を立てても仕方ないじゃ無いですか!」
小雪は秀麗に対して腹が立って仕方なかった。
褌の隙間から小雪が手を差し入れ、紅蓮の肉棒を扱き、そして口腔に含んで行った。


「小雪・・・・」
紅蓮も最近の兼光の行動に焦りと不安を抱えていた。
『このままでは、ここに居る者たちも、そしてこの大奥も壊れてしまう・・・』
だが兼光の傍にいる間は秀麗の身の安全も約束されたようなもの。
それだけが紅蓮の救いだった。

紅蓮はただ、その不満の矛先が秀麗に向かわない事をただ祈るだけだった。

放出していない体は小雪の口淫で、段々と力を漲らせて来た。
「あぁ・・・紅蓮様・・・これが欲しかった」
小雪の歓喜する声を黙って聞きながら、ただ小雪の良いようにさせていた。

『秀麗・・・』ずっと顔すら見ていない・・・
秀麗も自分と同じ気持ちでいてくれれば・・・そう願う紅蓮だった。
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